池野会員の油彩模写のご紹介

こんにちは。月曜日担当講師の佐竹です。
今回は池野会員の油彩模写グスタフ・クリムト「死と生」をご紹介致します。
池野会員は2010年8月銀座校オープン後、まもなくご入会されてから、鉛筆デッサン、パステル画、水彩画などを通じて描画材に親しみながら、本作「死と生」の模写に望まれました。
クリムトのオリジナルをご存知の方はお気づきかと思われますが、本作はトリミングされ、「死と生」の「生」の部分が抜き出され描かれています。ご自宅のリビングを飾るに相応しい華やかな作品となりました。
 

油彩模写『グスタフ・クリムト「死と生」から「生」』F15号
 
池野会員の制作ドキュメントから、プロセスをご紹介させていただきます。

模写の制作では、作者が描いた順序を筆致などから推察してゆくことが重要になります。
本作では、黄色のアクリル絵の具で下地を施し、実寸(F15号キャンバスサイズ)に拡大した原画を参照しながら、鉛筆で主に成るラインを写してゆきます。
 

彩色はオリジナルに倣い、油絵の具を使用しています。薄く溶いた絵の具層を重ねて、序々に原画へ近づけてゆきます。細部の描画は隠された下地色を彩色後、度々見直し、ラインを起こさなければなりません。非常に根気の要る作業ですが、池野会員の丁寧な気遣いが随所に見受けられます。
 

全体像が浮かび上がってきました。女性の白い肌の下地には黄をベースに緑、青などの寒色系、稚児の肌には橙、赤などの暖色系が使い分けられています。寒色系の肌は透明感を、暖色系は生命力を感じます。作者クリムトのプロセスを倣うことによって、テクニックに込められた思想もまた、追体験する発見の喜びも模写の醍醐味です。
  

制作中の池野会員です。本作は完成まで10ヶ月以上(39回)をかけての大作となりました。池野会員の熱意によって新たな息吹を与えられたクリムトの油彩「生」は、共に新しい時間を刻んでゆくことと思います。池野会員は現在、マチスの「ダンス」を制作中です。さらに巨匠の技術と思想に触れ、実り多き体験を培ってゆかれることと思います。池野会員の素晴らしい作品とこれからの制作にエールを贈ります。
 
佐竹講師評