Y会員様の油彩画「模写」

こんにちは。メッツ銀座教室で、主に火曜日の昼と夜を担当させていただいている講師の坂本です。
夜の教室から、主にお仕事帰りに制作されているY会員の作品をご紹介します。
夜の時間帯は昼間に銀座界隈でお仕事をされている方も多く、ゆったりと充実した制作空間が特徴です。
じっくりと時間をかける制作ペースで、題材や技法をひとつひとつ確認しながらの作業です。
今回はそんな制作過程も含めてご紹介できればと思っています。
 

 
 
Y会員ご自身は今までデッサンを制作されており、油彩画は今回が初めてとのことでいらっしゃいました。
まずは、ご自身のイメージする油絵や、どのような制作ペースと内容がフィットするかなどのご相談から始まりました。
そういった中で、まずは油絵具を順序立てて使用してみることをまずは第一に、出来上がった作品がご自身にマッチすることで選ばれたのが、今回のヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer 1632~1675)の模写作品です。
 
題材にした作品は、ご存じの方も多いと思います。
オーソドックスな色の配置や明暗の体験、そして絵の具の扱い方を学ぶ題材としてフェルメールは最適なものの一つといえるでしょう。
そしてなによりも模写をする場合に好都合なのは、小さい作品が多いので、実物大で制作できるという点にあります。
今回も、資料から実際の寸法を割り出し、原寸大での作業が始まりました。
 
完成作の豊かな色彩からは、制作中の熱心な情熱と、ひとつひとつの作業に対する驚きと喜びが伝わってきます。
仕上がったものは、鮮やかな印象ですが、比較的古典的に材料を扱う場合、実ははじめは色彩はありません。
ご覧のように制作の初めは、モノトーンで描いてゆきます。
この作業段階を踏むことにより、今まで制作していらっしゃったデッサンが活きてくるといえるでしょう。厳
密には様々な研究がされておりますが、この「形態」と「色」を分けて考える制作は長く続けられていた事です。
ひいては、これらを分けずに「色彩」を「形態」から解放した運動が印象派などの画家たちが試みたことといえるでしょう。
 
会員さまご本人も、はじめは驚かれておりましたが、一層の色彩を乗せた時の変化に実感を感じていらっしゃいました。
 
 

一層目。まだ赤い糸などには色が入っていません。
 
かつての画家は錬金術師的にとらわれていた時代もあり、魔法のような絵の具の変化には、現代の我々もときめきを隠せません。
 
 

 
 
にしえの工房のようなムードが漂った制作風景は、夜の銀座のムードとも相まって、シックで落ち着いた時間を教室を流していただきました。
 
模写のプロセスも活かしつつ発展させ、印象的な風景を制作されています。
これからも描く喜びのお手伝をさせていただけたら幸いです。