月曜日、土曜日担当講師の三津です。
先日行われた企画講習会『素材、材質により創りだす美術表現』の
様子をお伝えいたします。今回の企画では市販の下地材、アクリル絵具を
使ってマチエール作りにチャレンジしていただきました。
マチエールとは絵画の表面の質感の事で画肌、テクスチャーともいわれます。
色合い、艶、筆跡等により変化が出せます。キャンバス、紙にそのまま描き
だすのではなく、下地材を下に引く事で盛り上げ、絵具の吸収率の調整、材質、
質感が変わるので同じように物を描いても仕上がりはかなり変わってきます。
こちら制作風景。皆さん童心に帰って絵具と戯れていました。
強い質感を演出する事でモチーフを描写していく事だけではない作品の強度の
出し方や絵具、色自体の美しさに気付く事も課題になります。
こちら2点は斎藤会員の作品
斎藤会員は普段写真を元に油彩を制作しているのですが、
写真の情報に引っ張られて説明し過ぎてしまう事を気にされていました。
今回の企画では明確なモチーフが無い分絵具の魅力が前面に出て、
気持ちの良い画面になっています。ただまだ手の動き自体が小さくなり
がちなのでもっともっと大きな仕事が出来るようになると一段と抜けの
良い画面が獲得できると思います。
こちら2点は荻野会員の作品。
下の作品が一番時間をかけて制作された物ですが上の作品の方がまとまって
見えます。ここも重要な点なのですが、絵具の魅力を最大限に活かのに手を
掛け過ぎてしまうと素材感を損なう場合があるのでいじり過ぎない事や、
塗り重ねる場合には下の層と上の層をどう反応させるかの計画性、それと
ここでも大きな仕事が必要になってきます。
制作途中に自分の描いている作品の魅力に気付き、場合によってはそこで
手を置いて完成させてしまっても良いですね。描写をしていくのと違って
絵具の魅力は偶然に立ち上ってくる時も多いのでそこに気付けるかどうかも
ためされます。
最後に江川会員の作品2点です。
江川会員は3人の中でも一番大暴れしていただいて、感想として
こんな自由にやっても絵になるんだねと言っていただいて、
講師としてはとても嬉しく思いました。
途中、乾くのも待たず絵具を重ねていって、色味が鈍くなって
いたのですが、その濁色が上に乗せられた彩度の高い色味を支えて
くれています。
3人共に普段とは違う素材、作業工程で制作していただいた
事により、絵の幅、意識の幅が少しでも広がってくれれば幸いです。
お疲れ様でした。