メッツ絵画教室の銀座教室で日曜日担当の講師阿部です。
本日は遠藤敏之会員様の作品をご紹介いたします。遠藤会員の作品はゆったりとした筆致で描かれています。
一見素早く描かれているような筆致でも、実はじっくりとした思考の結果として表れているものです。
それでは、ご覧ください。
先にも挙げたように遠藤会員は非常にゆっくり制作を進めます。
ご本人としては水彩らしい表現をなんとか実現したいとおっしゃっていますが、今回挙げた四作品にはどれも実験と創意工夫が表れています。始めに挙げた庭園の作品では、紅葉の葉を表現するために結果点描になっていきました。画面中央への奥行きをにじり出すように筆致を重ねた結果、静謐な空間が立ち上がってきました。制作初期からこの作品は良くなるであろう構成でしたが、根気強さとあれやこれやで画面中央から光が差し込んできたように思います。
二作目は新しい作品です。
水彩紙をアルシュ紙に変更した一作目の作品で、夕焼け雲の大胆な滲みを成功させています。船の上から実際に観た美しさなんでしょうね、どこか郷愁の念に駆られる風景です。富士を意識しすぎたあまり縦に立ち上がってしまったのは愛嬌ですね。(笑
三作目はこの中では古い作品です。
黄色味がかった朝日と紺色の陰色のコントラストが美しいです。中間色として波上に入っている緑色が光を滲ませていますね。
最後の作品は一枚目の作品を完成させた後に、モノクロでやったらどうだろうというアイディアから生まれた作品です。
白黒から水墨画を想起させますが、筆致など表現方法は変えていません。単色に絞ったことで、遠藤さんの筆致の面白さが際立っています。無駄が省かれているところも今作の特徴です。紙の白への反応がきらりと光ります。
以上、遠藤会員の作品を紹介させていただきました。
遠藤さんは長く通われている会員様ですが、新しいことに挑戦する意欲を持った作者だと思います。ご本人は控えめな方ですが、コツコツとした筆致に野心というか、強い意欲を感じるのです。これからもよろしくお願いいたします。