こんにちは講師の阿部です。今回は石川俊宏会員様のデッサンをご紹介します。
石川さんは2019年にメッツ絵画教室に入会され、とても意欲的に制作をされています。
メディチのデッサンがこれから紹介する作品群の中では最新のものになります。
描き始めの段階で作品のテーマを朧げながらイメージし描画を進め、しっくりくる形を模索するように画面と格闘をしています。
イメージを形にするために構図は自然と大胆な構成をとっており、下からせり上がってくるような迫力のある画面になっています。
手の置物のデッサンです。こちらは一連の作品を制作するにあたってきっかけになった作品です。
それまでも意欲的に制作されていたのは変わらないのですが、素描における形、線、明暗の描写をどう扱っていいか戸惑っていたように映っていたのですが、このデッサンをきっかけに迷いが模索に変わっていったように思います。
線の扱い方が気持ちよく、逆光状態を表現する明暗のコントラストがしっかりと効いていて、光が綺麗な作品に仕上がっています。
髑髏のデッサンです。石川さんは制作している過程でやや黒ずんでしまう傾向がありますが、このデッサンでは明暗の段階を見極め、暗部の中の明るさを表現しています。
落ちている影も透明感のある影として描かれていますね。
陰影の描写にはいつも苦労されていますが、妥協せずに取り組めていると思います。
こちらはオードリー・ヘプバーンの習作です。このデッサンから背景への取り組み方が変化しています。
モチーフを魅力的にみせるための背景の扱い方に意識が向き出しています。
中々似てこないことに悩みながらでしたが、結果的に資料写真から離れていったことでオードリーに似ていったと思いますし、ただの写真模写ではなく石川さん側に引き込んでいくような姿勢に感銘を受けました。
最後はボルゲーゼの闘士胸像のデッサンです。こちらも絵にテーマを持って取り組んでいます。
背景の扱い方がさらに積極的になっていることがわかります。
形をよりよく表現することが結果的に画面全体に意識を巡らせることにつながっています。
石川さんは元々暗部の表現は比較的得意だったように思うのですが、枚数を重ねることで明部の扱い方に注意が向いています。
明部がしっかりと描かれているデッサンは説得力が変わってきます。
石川さんはとにかく素描表現が楽しいとお話されていて、もっと枚数を重ねて上達したいという意思をお持ちです。石川さんは毎回素描にテーマを設けています。
それはあまり言葉にしづらいイメージ?のような場合もあると思いますが、表現したいイメージを形に起こすよう試行錯誤することで確実に上達しますし、気づきも増えると思います。
デッサンはここまでやったら終わり、というものではありません。
絵を描く以上いつまでもついてまわるものです。
同じ素描でも描画材を変えるとまた違ったアプローチにもなりますし(木炭やってみましょうかとお話ししています)、着彩表現も素描の仕事と全く違うものではありませんので、興味が惹かれるがままに色々と挑戦していって欲しいです。