こんにちは。月曜日担当講師の佐竹です。
今回は昨年秋にご入会されました渡辺会員の作品をご紹介させていただきます。
渡辺会員はモチーフをデッサンした後、幾度にも画面構成を推敲し、絵肌の凹凸を利用した絵の具の重なりの美しいアクリル画を制作されています。
渡辺会員の制作ドキュメントから近作をご紹介させていただきます。
本作品は、ほら貝をモチーフに深いブルーの色調が特徴的な静謐なアクリル画です。
キャンバスにアクリル P6号
こちらは本作品の制作プロセスです。薄く溶いた絵具を重ねてゆくグレージング(おつゆがけ技法)を施す前の段階ですが、下地となるマチエール(絵肌)にはモダンテクニックのひとつデカルコマニー(突き押し技法)が採用されています。画面の凹凸と明暗から完成への工夫と配慮が窺えます。
キャンバスボードにアクリル F3号
本作品では、バラをモチーフにスクラッチ(引っ掻き技法)による絵肌が作品の物質感をより強固にしています。抑えたモノトーンの色調が画面の凹凸をより感じさせる作品です。
キャンバスボードにアクリル F3号
上述の作品と平行して作られた抽象画です。○△□といった、絵画の基本的構成を巧みに配列し、深遠な幻想性を感じさせます。画面構成には制作者の感覚は勿論のこと、造形的理論が不可欠です。作品から渡辺会員独自の世界観に触れることができます。
制作中の渡辺会員です。現在制作中の作品では、モチーフにピッチャー、果物、パン、ミルク缶、ドライフラワーなど様々な素材を組み合わせ配置し、デッサンすることからスタートします。デッサンをもとに画面構成を練るエスキース(画考)作業に入ります。
制作中のエスキース(画考)とキャンバス
キャンバスにアクリル F3号
本作品にはこの後、画家パウル・クレーの発案した技法「油彩転写」を採用し、自作のカーボン紙を使った線描が加えられる予定です。渡辺会員の独自のアプローチによって生み出される数々の独創的作品群に今後益々期待が高まります。本作品の完成とこれからの展開を楽しみに致しております。
佐竹講師評