こんにちは。月曜日担当の佐竹です。
今回は鈴木会員の油彩画をご紹介致します。鈴木会員は、昨年8月の銀座校開講以前より新宿校に在籍し、主にデッサンをはじめ、水彩画の描画技術を習得されました。銀座校に移籍後は、様々な油彩画の描画方を熱心に制作研究し、技術習得に励んでいらっしゃいます。
本作品は代表的な油彩画の古典技法「グリザイユ技法」で描かれています。グリザイユ技法は白黒(モノトーン)でデッサンするように作品を仕上げてゆきます。モノトーンの作品が完成した後、彩色に移るため、大変に手間と時間がかかりますが、鈴木会員は回を重ねるごとに、留意点を踏まえ、根気よく制作に望まれました。鮮やかさの中に静謐さを感じる、古典技法ならではの奥行きの深い作品に仕上がりました。
「静物油彩」F12号
制作プロセスのドキュメントをご紹介致します。
まずは、モチーフの構図を決定するために、エスキースと呼ばれる絵の構想を練る作業を行います。
鉛筆でモチーフ全体をデッサンした後、本画で描く場面を赤いラインで囲んでいます。
この際に画面の明暗や奥行き、空間の流れを意識してゆきます。モチーフを移動したり、入れかえたりしながら、完成イメージを序々に掴んでゆきます。
モノトーンでの描画が完成しました。シックな下地を生かし、花々と背景のコントラストが落ち着いた雰囲気を醸しだしています。本作品の制作には3ヶ月以上かかりましたが、モノトーンの完成までに8割~9割の労力が費やされています。
彩色は下地の明暗を大切に、透明色での重ね塗りが施されます。グレージング(おつゆ描き)と呼ばれる技法で、幾重にもなる色の層が油絵特有の輝きを放ちます。本作品は古典技法のテクニックを活かしながら、鈴木会員独特のタッチ(筆使い)が心地よく画面に残されています。鈴木会員は本作に取り掛かる以前には、印象派に代表される速描き技法(アルラプリマ画方)を試み、本作にも十全に活かされています。幅広い絵画表現の可能性を追求される鈴木会員のさらなる展開を期待致しております。
佐竹講師評