メッツ銀座絵画教室講師の阿部です。田中会員の油彩画作品「今日は水星が見えるね。」
この作品は今月開催しました会員作品発表会「楽々展」に出展しました。
情景が匂い立つ作品とはこのことです。状況への説明は最低限にし、観るものの想像を刺激する表現方法で描かれているように思います。
色彩は鮮やかに描かれ、柔らかな光に、夜空の闇ですら色彩をもって表れています。
画面下部に描かれたシルエットは二人でしょうか。どんな夢をこの光景から描くのか。田中会員の作品にはどこか詩的な響きを感じさせます。
筆運びは軽く、ドローイングするようなペインティングだなと感じます。
支持体を絵の具で塗りつぶしながらも、スケッチのような臨場感あるタッチで描いていく描き方は田中会員の持ち味です。
昨年までの作品は状況に対する説明が多く、構図と相まった絵画的イリュージョンを邪魔していたのですが、今年に入ってからの作品は構図と形、色彩のバランスが良く、絵画世界の臨場感をダイレクトに伝えてくれます。
田中会員は速描きの描き手です。
教室の制作時間二時間に最低一枚のペースで描き上げます。イメージから構図を作り、それを形にするまでの時間が早いです。構成の切れ味が上がってきているように思います。
着彩に移ってからも迷った時にはエスキースに戻るという私のアドバイスも実践してくれています。
デッサンとタブローを行き来しながら制作を続けてください。
田中会員はチューブから捻り出した絵の具をそのまま擦り付けるような描き方をしています。
そのため絵の具の性能に強く依存している部分があると思うので、気に入った色や絵の具メーカーを探してみたり、キャンバスを工夫してみたり、溶き油の種類、使い方を調べてみたり、そういった研究も田中会員の絵を豊かにしてくれると思います。私も知る限り様々紹介できればと思っています。